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映画ならではのアプローチとキャストが絶妙!「3月のライオン(前編)」を鑑賞

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「3月のライオン(前編)」を見てきました

映画を見に弘前まで。岩木山がみごとでした。

2017年3月18日から、「3月のライオン」前編が公開中です。

原作である漫画が好きなので、ずいぶん前から楽しみにしていました。主人公が神木隆之介くんっていう時点でもう間違いない。

平日昼間とはいえ、なかにお客さんは5、6組…。「君の名は。」も公開後1週間ぐらいで見に行ったときはお客さん少なかったですが、そのときよりも少ないな…。君の名は。はその後ヒットしたので、3月のライオンもそうなればいいなぁw

※以下、ネタバレを含みます※

キャストが素晴らしい

見終えてまず思ったのは、原作が漫画って映画になると途端にがっかりするパターンがすっごく多いんですが、この作品に関してはキャストが素晴らしい!ってこと。

ちょいダサのメガネをかけた零の感じとか、ひょろひょろした感じとかそのまんまだし、片方の腕をもう一方の手で握るクセ(うまく説明できないけど、漫画でもよく出てくる)もちゃんと表現されてて…神木くん、ありがとう!(?)もう23歳だそうなのに、高校生役に違和感がないよw

脱線しますが、神木くんを最初に見たのはたぶん「瑠璃の島」っていうドラマでしたねぇ…探偵学園Qより前…あんなに小さかったのに大きくなっちゃって(※おばちゃん発言)

実際に作者がモデルにしたという島田さん役の佐々木蔵之介さんをはじめ、後藤・宗谷さん・幸田パパ・香子・あかりさん・一砂とスミスなどなど、文句なしですね。

あまり知らない役者さんだった山崎順慶やモモ、ひなた役の人たちもよかったです。

漫画とはけっこう違うストーリー展開

最初のシーンからして、漫画とはちがうアプローチでした。そして全編を通して、漫画の必要な部分だけをぎゅっと圧縮した感じで、時系列は割とバラバラ。ちがう話同士のエピソードがくっついている箇所もけっこうあったんですが、全体として見れば何の違和感もなくうまくまとまっていたなぁと。

原作(漫画)を知っているわたしが見てもそう思ったし、恐らく知らない人が見てもわかりやすいと思います。

重要なシーンやセリフはしっかり出てきつつ、「あのシーンはぜひ見たかったなぁ〜」というシーンが省かれていたのを残念に思ったり… (省略されても仕方ないけど、高橋くんのエピソード欲しかった)(あと幸田パパにもらったカーディガンのエピソードとか…)

川と部屋と将棋と

零の目線で進んでいく話は、殺風景で将棋盤しかない、カーテンすらない部屋と、6月町のあかりたちのいる家の明るさの対比がくっきりと感じられてけっこうせつなかった。香子との微妙な関係も、「きょうだい」としておなじ部屋にいるふたりの生々しさ、危うさがびりびりと伝わってきました。こういうのは映画だからこそだなー。

神木くんの目線やちょっとしたしぐさ、息づかいなどの演技がすごく細かくて、零は言葉少ななキャラだけどいろんな想いが表現されていたと思います。

零は川が好きという設定で、川のちかくのアパートに住んでいて部屋の窓からも川が見える。川を渡った先にあかりやひなたの住む町があるし、ひなたがひとり泣きに行ったのも川のそばだった。

出てくる風景は完全に都会で(漫画の中ではもっと下町っぽいイメージだったけど)、でも川がフューチャーされてるとまた違った景色に見えてくるというか…

漫画で、零が将棋で戦う人生を真っ黒い海を泳ぐことに例えていたシーンがあったけど、なんとなくふわふわと浮遊してる感じ、先がうまく見えない感じ、手足をバタつかせてもうまく進めない感じ…が、「川」なのかな?と思いました。

叫ぶのはアリ?

わたしとおっちゃんの意見が分かれたのが、安井さんとの対局のあとに零が叫ぶシーン。これは漫画のシーンそのまま表現されていたんですが、おっちゃんは「ああいう風に叫ぶのは零のイメージに合わない気がする」と。

わたしは見ていて違和感はなかったし、むしろどちらかというと好きなシーンだったので意外に感じました。とはいえ、合わない気がするっていうのも確かにわかるんですよね。

普段口数が少ないからこそ、そして本音をぶつけられる相手が身近にいないからこそ、ああいう形になるのではないかなと。あと、叫ぶってこと自体がもう若さだというか…10代ならでは・らしさの表現方法なのではないかとわたしは思いましたね。

聖の青春

じつはこの映画を見る前日、「聖(さとし)の青春」という映画を見ました。2016年11月に公開されたもので、かつて羽生さんのライバルでもあった棋士・村山聖が主人公。松山ケンイチくんが主演で、役作りのために20kg増量したそう。

聖はネフローゼという難病を抱えながら将棋のプロになり、29歳で亡くなった人なのですが、3月のライオンに出てくる二階堂はこの人がモデルだと言われています。

描かれているのは同じプロ棋士の世界で、出て来る将棋会館や対局シーンなど、重なるシーンはたくさんあったんです。

でも、聖の青春はあくまで聖が生きた世界を描いたもの。一方で3月のライオンは零を中心にそれをとりまく世界すべてのお話、という点ですごく対照的でした。

幸田パパ、香子や歩、安井さん、二階堂、そして島田さん。映画に出てきたひとたちだけでも、さまざまな背景が垣間見えます。プロ棋士になるだけでも生易しくないし、そこから勝ち上がって生き抜いていく戦いも半端じゃない。

将棋の世界に生きるひとびと

聖の場合は短い生涯の中で、目指しているライバル(羽生さん)がいて、勝つこと=生きることのすべてだった。でも3月のライオンは総じて、「零が将棋を通じて大人になっていく物語」だと思うんですよね。もちろん人生の柱として将棋は存在するけど、決して将棋がメインの話ではない。

零が将棋をはじめたきっかけは「好きなわけじゃないけど、生きていくために仕方なく」だった。今も戦い続けるのはなぜなのか?と自問しながら将棋を打ち続けている。

それってたぶん将棋に限らず、どんな人にもどんな仕事にも当てはまることなんじゃないかなーと思うんですよね。

零の場合は生い立ちが極端だけど、確実に人との出会いと触れ合いによって自分や未来を見出していく。きれいごとばっかりじゃないし、不器用だし、失敗が多いのもいいです。人間っぽくて。

絶対に出て来ないとは思うけど、後編で野口さん出て来てほしいなーw

3月のライオンとは何なのか

3月のライオンのコミックには、タイトルの下に「March comes in like a lion」という英文が添えられています。

語源はイギリスのことわざ「3月はライオンのようにやってきて、子羊のように去る」というもので、荒々しい天気からだんだんと穏やかになることを3月の天気にたとえている言葉だそう。

監修をしているプロ棋士の先崎さんは、コミックのなかで「棋士たちが昇級をかけて争う順位戦が3月まで行われるため、3月にはみんながライオンになる」と書いていました。

でも羽海野先生ご本人は「同名の映画のタイトルだけ昔から知ってて、物語になりそうな言葉だと思っていた」と語っていまして…ペンネームですら「海の近くの遊園地」から「ウミノチカ」とつけた人なので、意味よりも語感を大切にするタイプなのではないかと想像します。

前作「ハチミツとクローバー」もスピッツの「ハチミツ」とスガシカオの「クローバー」を聴いていたからという理由でつけられたタイトルでしたしね。最終話ではちみつを塗ってクローバーをのせたサンドイッチが出てくるという無理やり展開もありましたが…

いずれにしろ、深読みする必要はなさそうですw

後編が楽しみ

話の筋としては漫画で知っていたので、漫画とは違う映画ならではのアプローチを楽しんで観ることができました。川本家がセットじゃなく本物の一軒家を使っているとか、撮影前に三姉妹役の3人がお泊りをしたとかいう情報も事前に知っていたのでw けっこう安心して観れたのかもしれません。

原作を裏切らない映画というのは稀有だし、どのエピソードがどう表現されるのか、後編もすごく楽しみです!

将棋を知らなくても全然楽しめる映画だと思うので、おすすめですよ〜。

 

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