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秦基博のアルバム「青の光景」全曲レビュー&感想

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「青の光景」発売

 
シンガーソングライター、秦基博(はたもとひろ)の名前が売れたのはなんといっても、2014年の映画「STAND BY ME ドラえもん」の主題歌となった『ひまわりの約束』のスマッシュヒットからではないでしょうか。
その後、2015年に映画主題歌『水彩の月』、『Q&A』と続いての、3年ぶりのオリジナルアルバム「青の光景」の発売となりました。
およそ7年越しのファンをやっているわたしの視点から、レビューしたいと思います。
 

秦さんとの出会い

 
初めて秦さんの歌を聴いたのは、セカンドシングル『鱗(うろこ)』が発売されたときでした。
出かけた先のコンビニの有線で流れてきた、どこまでも伸びてゆく歌声に衝撃を受け…「秦基博(はたもとひろ)」という名を覚えて帰ったことを覚えています。のちに、もともと知っていた『僕らをつなぐもの』も秦さんの曲だったと知るなどご縁を感じるように。
 

秦さんの魅力

 
秦さんの魅力は歌声、詞世界、キャラクター、いろいろあると思いますが、何よりギター弾き語りをするわたしにとっては、ギター1本でいつでもどこでも弾き語りで歌うことができる秦さんは、好きな曲をそのまま弾いて歌えるという意味で身近な存在に感じられました。
秦さんの場合、ライブアルバムや、弾き語り1本のベストアルバム「evergreen」なども出しており、おなじ思いで弾き語りをするファンは多いんじゃないかと。
 

今回CDを買ったお店

 
北秋田市鷹巣駅前銀座商店街「電器プラザササキ」さん内にありますCDショップ「Woody forest」さんで購入しました!
 FBページはこちら。こちらのお店の店長さんが秦さんの大ファンでしてね。
ファンクラブのイベントに当選されて、店名を秦さんご本人につけてもらったそうです!
なのにせっかくのその諸々の写真を撮ってこなかったので、また後日詳しくレビューしますね~。
 
 

それでは全曲感想をば。(長いよ!)

「青の光景」は3年ぶり、5枚目のオリジナルアルバムとなります。
その3年のあいだには、セルフセレクションアルバム「ひとみみぼれ」と、弾き語りベストアルバム「evergreen」を発表しています。
その間、シングルこそ5曲出していますが…要するにファンにとっては、待ち遠しくかなり久々のオリジナルアルバムとなったわけですよ。
しかも今回はセルフプロデュースです。デビュー10年目に突入しようという節目に、前々からやりたかったことを形に出来たという塩梅。
期待も高まるってもんよ。鼻息も荒く、初回限定盤のDVD付きを購入しましたよ。そちらも良かったです。


1. 嘘 
 
最初の印象は「え、これが一曲目?」。だいたいタイトルが『嘘』って…みたいな。
でも聞き慣れるとすごく馴染むんです。不思議なほどに。バチっとはじまる一曲目って多いですが、もわっとはじまるパターンもアリなんですよね。
それでなくとも今回のアルバムは全体通してよく考えられた曲順だと感じます。
 
びっくりしたのは「永遠」というワードを、フェイクのようなメロディにのせてサビ終わりに繰り返すところですね~。
「永遠」→「ぃえぃえ~ぃ」みたいに聞こえなくもないんですよ。そのあいだを狙ったのかな。
「嘘」も信じることによって「真実」に変わる、ことばひとつ想いひとつで簡単にひっくり返ってしまうような世界。
その風景に無機質に繰り返される「永遠」という言葉が、いつまでも頭の中に残ります。


2. デイドリーマー (大東建託『みんなの想い編』CMソング) 
 
打って変わって、ザ・王道ソングとも言うべき、秦さんの真骨頂。
雰囲気は『SEA』のような、『シンクロ』のような。夏を喚起させる、爽やかな空気が流れます。
さいきんピアノで作曲されたりもしてるせいか?後ろで鳴る鍵盤が効いています。あとサビ前と終わりのティンパニの音でメリハリがついていますね。



3. ひまわりの約束 (映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌) 

 
キター!ってつい言っちゃう3曲目です。聞き飽きてるはずなのに飛ばさず聴いてしまう…。
ギター1本で始まってだんだん音数が増えてゆく王道パターン。
やはり壮大なバラードはストリングスよなぁ…。
 
ちなみに「stand by me ドラえもん」は観てないんですが、きっと内容に沿った歌詞なんですよね。
でもわたし、ひまわりは好きじゃないんですよw 太陽のほう向いて咲くなんて前向きすぎて明るすぎて腹が立つ。(ひねくれ)
でも「僕」にとっての「君」がひまわりのような存在だっていう例えはよく伝わります。
「ガラクタ」や「ちぐはぐ」のような言葉から、自然に次へ繋げるような描き方が上手ですよね、秦さんは。
 
ちなみにカラオケランキングでここ2年ぐらい?1位とってるみたいですね。わたしもライブでカバーさせてもらってますが、めっちゃ難しい…。みんなよく歌おうとするなぁw



4. ROUTES (NHK Eテレ『人生デザインU-29』テーマソング) 

 
これの雰囲気は『グッバイ・アイザック』を彷彿とさせますかね。
オクターブユニゾンではじまるAメロがうつくしい。疾走感のあるギターに、これまた後ろで鳴る鍵盤がポイントになっていますね。
サビへ繋げるBメロ、間奏でギターソロへ繋げるまでのあいだのドラムワークも面白い。
ラスサビで後ろでブツブツ言ってる(!?)コーラスも面白いし、ほんとアレンジが凝ってるなー。
 
秦さんはもともとアコースティックな人なだけあって、ギターソロがすごく控えめというか、音が決して前面には出てこないんですね。
というかあまりエレキに興味ないのかな?笑 別に悪い意味ではありませんが、逆に面白いなーと思います。



5. 美しい穢(けが)れ 

 
初めてアルバムを一巡したとき、ビビッ!ときたのがこの曲でした。唯一の、アコギ1本での弾き語りの曲です。
速攻で「これはカバーして歌いたい!」と思いました。大好物な雰囲気。
山崎まさよしの『コイン』を聴いたときのような感覚です。秦さんで言うと、似てるというわけではないんですが聴いて弾きたいと直感で思ったという意味だと、『プール』もそんな曲でした。この曲は秦さんの曲の中で最も有名なカップリング曲と言われている名曲ですので、よければぜひ。
 
なかなかショッキングなタイトルですが、他の男にいいように弄ばれている「君」を見つめているしかできない「僕」の歌。
「君」が穢されるのは、決して「君」を見つめてはいない「彼」にそれでも「君」が自分に触れさせるから…
けれどそんな風に穢されればされるほどに「美しさを増す」のだ、と歌います。
そしてそれでも、「出会わなければ良かったとは思えない」と。
ちなみにエロスにはいかないギリギリのラインを狙って書いたそうです。でも秦さんに「抱かれた」とかうたわれるとドキっとしちゃうなぁ。桑田さんならもっとエグいこと言っても平気なんだけどw
 
「いっそ」と「一層」で韻を踏んでいるのですが、「一層」で「う」を強調しないでうたっているのであまり違いが出ていません。
これが意識してなのかどうなのか…個人的には違いをはっきり出して欲しかったなぁ。
 
歌い方はけっこう弱めで、音域も中低音なので、張り上げる高音にはいかずこれがまた雰囲気を出しています。
個人的にはもうすこしテンポはゆっくりでも良かったかとおもいます。実質AメロとBメロを繰り返すだけなので、けっこう短いし。



6. Q & A (映画『天空の蜂』主題歌) 

 
こんなかっこいいイントロある!?って聴いた瞬間ノックアウトでしたね。後ろがシェイカーだけではじまるのもいい。
シンプルなリフも効いてるし、アコギで弾いても楽しそうって思うのが秦さんの『赤が沈む』みたいでいい。
 
「傷つけるため それとも守るため この手はあるのって
簡単なQ&A わかってるはずだって ステレオで天使と悪魔」
この2行がたまりませんな~。からの、「迷うことなく君は手を差し出せるか?」という提起ですよ。
 
こういうメロディだと、全編通して韻を踏む効果も出ていていいですね。
そしてやがて天使と悪魔のささやきは消え、自分自身の声をきくのです。
Q&A、そのどちらも自分自身の中に。詰まるところは「愛」だ、とうたう、反戦歌のように聞こえました。
またその「愛だ」は『美しい穢れ』に答えてるような気もしたりしてね。
 

7. ディープブルー 

 
さて、ファンのあいだでもっとも「こんな曲初めて!!」と物議を醸しながらも、好評を博している一曲です。
とにかく…今までに無かったですね。深海に潜っているかのような音作り、ディープブルーを表現した世界。
ふだん演奏よりも歌ばかりに耳がいくわたしですらも、このベースラインと後ろで鳴る潜水艦の呼吸音のような「チチチチチチチ…」が気になっちゃって。
 
ほとんどのメロディをファルセットで通すという画期的な歌唱。それがまた世界観を際立たせています。
壮大な間奏も、後奏でのフェイクもいいですね~。
 
ディープブルーは、深い蒼の底はまるで、生まれてくる前にいた世界のよう。
そして「いつか孤独を その哀しみを分かち合えたら 光の浮かぶ水面に 共に還ろう」と閉じています。



8. ダイアローグ・モノローグ 

 
わたしが特別に好きな曲は『言ノ葉』なのですが、その次に発売されたシングルで、恐らく最も評判が良くない…でしょう。
何といっても、「シングル感」がないんですよw CMに使われてそうな雰囲気はあるんですが、メインを張るような曲では決してない。
それはそれで悪いことではないんですが、かろうじて、アルバムの中にあってはアリかな、という。
それでもアルバム通して聴いたときに未だに浮いて聞こえるのはここだったりします…。

 

9. あそぶおとな 

 
やっぱこういう曲が秦さんアルバムには欲しいですよね~。単純に元気になれます。
後奏「ララララ~♪」のとこはやっぱ、ライブでみんなで一緒に歌うのが良さそう~とか思うと、ツアーのチケット当たって欲しいです。
 
ところで「あのマンガにあった、あきらめたらジ・エンドだ」ってのはやっぱスラムダンクでしょうか。
 

10.Fast Life 

 
風刺曲ですね。ボンゴ?的な太鼓のリズムがたのしく、リズムはボサノバ風ですかね。
こういう鍵盤も面白いですね。
「だんだん~~なってく」の畳み掛けが、明るい演奏とメロディに乗っているだけ恐ろしさを浮き立たせます。
こういう曲は歌うのは楽しいと思います。その雰囲気だけで言うなら『トレモロ降る夜』の弾き語りバージョンもそんな感じ。



11.聖なる夜の贈り物 (ハウス『北海道シチュー』CMソング) 

 
今現在、秦さんが連日のようにテレビ番組でうたっているのがこの曲です。そう、あのシチューのCMの曲だよ!いわゆるアルバム先行ってやつですね。
back numberもそうなんですが、「ザ・クリスマスソング」を作ろうと思っちゃうと、やっぱこういうアレンジなっちゃうよね…。
まぁ聴いて単純にわかりやすく冬っぽさを感じられるっていうのもアリなのかな。
 
サビは真っ先に「新しい歌みたいだな」と思ったんですが、聴き慣れた今ではこれはこれでいいなと思っています。
CM曲なだけあってキャッチーですしね。
でも「プレゼントはいらないから 君の笑顔ください」はちょっと…キツイですw   なんかね、BOAの「メリクリ」みたいだ。
 
三声コーラスは綺麗です。ストリングスと相まって重厚なサウンドに。
 

12.水彩の月 (映画『あん』主題歌) 

 
これまた大好物なコード感です。発売前にカバーしてyoutubeに載せたほど。
ピアノで作曲しただけあってピアノが活きてる、というか、PVでもギター持ってはいるけど弾いてないし。(1番ね)
 
秦さんの声は、ちょっと掠れてて澄みきってるわけじゃないし、高音と低音どちらかに偏ってるわけでもないし、
伸びやかというほどそれが売りってわけじゃないし、とにかく良い意味で「完璧すぎない」といいますか、「ちょっと足りない感じ」があるぐらいが、
きっとずっと聴いていたくなる声なんじゃないかな、と個人的にはおもってます。
音程的には生歌でも相当強いのですが、特にボイトレや練習を積んだりもしたことがないっていうのがまた、「え、何それ天才なの?」って言いたくなりますね。(ひがみ)
 
『水彩の月』って想像ですけど、すこし曇りがかった空にぼんやりと影を落とす、輪郭のぼやけた日の月のことかなって思います。
それはくっきりはっきり見えるものではなくて、そこにありながらまるで不確かにぼやける存在=「君」と重なるのかなぁ。
世界観的には「言ノ葉」や「ひまわりの約束」と近くて、「会えなくても、どこにいても、君も君にとっての僕も同じく支えであれる存在でいたい」ってことを歌っていますね。
「話せなかったことがたくさんあるんだ」などと思わないように、今言えることは言えるだけのことばを尽くしたいです。
 

13.SallyGLOBAL WORK CMソング) 



ん?『Lilly』?(違う)
むしろ三拍子で語感が似てる『SATIE(Cocco)』を思い浮かべてしまったり…
 
どこまでも、いつまでも、大きな意味で包括するような歌。
きっと自由にはばたく「君」をみつめていることが「僕」のしあわせでもあるのだろう…と考えると、秦さん的お父さん視点になってるのかなと思う。このアルバムで歌ってきたことをラストで締めくくるにふさわしい曲ではないでしょうか。
 

感想を書き終えて

 
そんな感じで一曲ごとの感想でした。
 
全体的に気に入った曲ばかりで、どれを飛ばすということもなくひとつの流れで聴ける良作だと思います。それぞれの曲のカラーも出ているし、秦さんが表現したいことも伝わってきます。
ほんとにすきなアーティストじゃないと飛ばし聴きしたり、ベストアルバムだけ借りてきたりしますが、オリジナルアルバムをきちんと聴かせられるというのは強いなと。
 
正直今まではレンタルで済ませてきた程度で、そこまで胸を張って「大好きなアーティスト」と言えるほどじゃなかったですが、今回は買って良かったなと素直に思いました。それだけの価値があったと思います。初回特典のDVDも、サポートメンバーの話がきけたのが面白かった。三内丸山遺跡のライブ映像も観れます。
 
全体を通してまず思ったことは、「美しい穢れ」から「ディープブルー」までの3曲が、このアルバムの核だろうな、ということ。
そしたら、おんなじことを書いてるひとがいました。
 
 
「ラブソングライター」って称号…荷が重そうだ。そして、こんな短く的確にレビューが書けるプロが羨ましくなりました。(…)
 

本人のインタビューはこちら。

じつはこれを最初に読んだほうがよくわかるって説もありますw
 
 
そういうわけで、「青の光景」を引っさげてのツアーがはじまります。
3/19 秋田県民会館当選しました!
 
ファンクラブ入ってないので心配でしたが、CDに同封されていた先行予約で無事げっとできましたよー。ありがたい制度や…
 
というわけで大好きな曲ばかりで構成されたアルバムツアー、楽しんできたいと思います。その際にはまたレビューしますね。
 

青の光景 通常盤

青の光景 初回限定盤

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