ドキュメンタリー映画「ふたりの桃源郷」を大館の映画館御成座で鑑賞(秋田県大館市)

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大館市の映画館

お隣の大館市にある映画館、御成座については以前記事にしました。大館市で50年以上愛されながら閉館した映画館が、時を経て復活したのが2014年のこと。

その1周年イベントで「ニュー・シネマ・パラダイス」を観たのです。久しぶりに観たけど、大人になってから懐かしい作品を観るのってまたいろんな気付きがあっていいですよね。

それからまた1年以上経ってしまいましたが、最近流れてきた告知の中で気になった作品がふたつありました。

「ふたりの桃源郷」そして「アルビノの木」。同日上映なんですが入れ替えなので、迷った末「ふたりの桃源郷」を観ることに。

久方ぶりの御成座へ

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御成座では基本的に、金〜日の週末に上映しています。金曜の昼、しかも風が強く荒れた天候のせいか、人影はなく……

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これです。ドキュメンタリー好きなんですよねぇ。しかも題材が山暮らしということで観るっきゃないと。

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振り向いたらあれは映写室?ニュー・シネマ・パラダイスを彷彿とさせるなぁ…と思っていたら、女性2人組もおんなじことをおっしゃってましたw

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トイレも温めてくれていてほっこり。きれいだし。

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寒い日だったのでストーブのそばへ。しかもオットマンつきの席を見つけちゃったw 

お客さんはわたしのほかに女性2人組のみ。スタッフの方と女性たちのやりとりでなんともほのぼのした気持ちになりました。なんていうか、油入れて、コーヒー淹れて、映画の説明をして上映。と、少人数ならではのゆったりした時間の流れ方だなーと。

とはいえ、この人数ではやはりちょっと経営のほうが心配になりますね…。御成座さんはSNSでもマメに告知したり、イベントや企画もさまざまなジャンルで行っていたりとかなり精力的に活動されてるので、応援していきたいですね。

ふたりの桃源郷を観て

感想を先に一言で言うと、すごく良かったです。でも想像とはまったく違っていましたね。「おじいさんとおばあさんの楽しい山暮らし」的な浅い想像をしていたのですが、そんな甘い夢物語なんかではなく、ただただ生々しく厳しい現実がそこにありました。

 

これは山口県岩国市のある山で暮らす夫婦を25年間追ったドキュメンタリーで、もちろんすべてノンフィクションです。そこは電気もガスも水道もなく、終戦後に家族で切り開いた山。40代後半までそこで暮らしますが、その後は60代後半まで大阪に出て、ふたたび夫婦で山に戻りました。

以下、ネタバレあります。

覚悟を決めて山へ入ったふたり

まずどきっとしたのは、撮影を始めた時点ですでにおじいさん77歳、おばあさん72歳だったこと。まさかこのまま25年続くはずがないことは予想がつきました。すでにふたりの頭は真っ白で、おばあさんの腰は曲がり、農作物をとったり洗ったりするだけでも「よいしょ、よいしょ」状態。けれどふたりの表情はとにかく明るく、笑い声は絶えず、手をつないで歩き動かないバスの中でふたりおなじ布団でねむる様子はほんとうに美しかったです。

数年でおじいさんが病気をして山を降り、ふもとの老人ホームに入るのですが、日がな1日こたつでテレビを見るふたりの表情はとにかく虚ろ。春になるとすぐに、朝老人ホームを出て昼のあいだは山に行くという生活になりました。「山で手を動かしているほうがいい」とおじいさんは言います。

待っとるからね

ある日、おばあさんが心配そうな顔をして山の奥を見つめていました。キノコ採りに行ったおじいさんが帰ってこないというのです。おばあさんはちっちゃな体で目いっぱいの声で「おじーいちゃーん!」と叫びます。何度か繰り返すと、山の奥からおじいさんの返事がこだましてきて、おばあさんは安堵の表情。「待っとるからねー!帰ってきてやー!」おじいさんが迷わないように、帰るべき場所を示すかのように、おばあさんは声を張り上げました。

また別のある日、今度はおばあさんが山奥へ入りました。おじいさんの好物である松茸を探すためです。3時間かけて歩き回るも、この日は松茸は見つからず。咲いていたちいさな花を摘んで帰っておみやげに。おじいさんは笑顔でうけとり、コップに花を飾るのです。

最期は山で迎えたい

夫婦には娘が3人おり、それぞれ大阪・奈良で家庭を持って暮らしていました。あるときは夫婦揃って娘夫婦のところへ遊びに行き、家族みんなで旅行を楽しみます。そのときおじいさんは感謝の言葉と共に「最期は山で迎えたい」と言います。じつはこの旅行は、娘たちが自分たちと一緒に暮らしてほしいとふたりを説得する目的がありました。しかしおじいさんのこの言葉を聞いて、無理に呼び寄せるよりも、ふたりが山で暮らすことをサポートしていこうと考え始めます。

以来、姉妹は月に1度山で集い、家族の時間を作るようになりました。身のまわりのこともだんだんできなくなっていくふたりへ、好物を作っては持っていくように。やがて、三女夫婦が山のふもとへ引っ越してきて、老人ホームに遊びに行ったり山へ連れていく役割を請け負うようになりました。

2人とも患うように

おじいさんはぜんそくと前立腺がんを患い、おばあさんは物忘れが出てきます。おじいさんが数ヶ月入院しているあいだは、三女夫婦が荒れた山の手入れをし、退院したおじいさんを喜ばせました。

その後三女夫婦と一緒に山の仕事をやろうとするものの、おじいさんの体はもう思うようには動きませんでした。この時点で80代後半。そして、92歳でおじいさんは亡くなります。葬儀は山でいとなまれ、遺言は「移住したときに植えた松の木を売って、おばあさんのために使ってほしい」お墓も山に建てられました。

ふるさと

おばあさんは認知症が進み、三女夫妻が山へ連れていくたびに「おじいちゃんは何で来んかったんじゃろ?」と繰り返し、山に向かって叫びます。「おじーいちゃぁーん!おじいちゃーん!」 おじいさんの遺言通り、松の木を売ったお金でおばあさんは施設に入りました。

その後は三女が、寝たきりになったおばあさんを介護します。昔おばあさんが歌って聞かせてくれたという童謡を口ずさみながら。その中に「ふるさと」がありました。「志を果たしていつか帰る」場所、ふるさと。

ふたりの心の中には、どこにいてもいつでも山がありました。最期も山で迎えたいと願っていた。けれど動かなくなっていく体、心配する子どもたち、自分たちだけでは暮らしていけないという現実。それでも子どもたちが最大限ふたりの意志を尊重し、車いすを使ってもおんぶしても少しでも多く、長くふたりを山へ連れていき、山での時間を過ごさせてあげた。ふたりだけの桃源郷での日々と、家族が加わってからの賑やかな暮らしと、そして老いたふたりのどこか物悲しげな目。その対比が、25年分の月日がはっきりと、くっきりとありのままを映し出していました。

おばあさんは93歳で亡くなりました。今はあの山で、おじいさんと共に眠っています。

食べていくこと

おじいさんは戦争を経験して、「自分たちが食べていけるだけのものは、自分たちで作って暮らしていこう」と決めて山に入り、開拓しました。ゼロからの開拓は決してラクではありませんでしたが、薪を燃やし、自家発電し、湧き水を引いて暮らしを作り上げた。お金よりも大事なのはまず食べることなのだと。移住してきた三女の旦那さんが、ここに来て初めてその意味がわかった、と言います。

ふたりの桃源郷は、ふたりが汗水たらして作り上げた場所。他の誰に価値がなくても、ふもとの街まで片道30分以上かかっても、電気もガスも水道もなくても、ふたりにとっては還りたいふるさとなのです。必要最小限の暮らしの中で、ふたりが互いを見つめるまなざしは優しく、そしてただただ山は、自然は厳しかった。ふたりの生きる姿勢は、最後まで純粋たるものでした。

観終わってから、ふたりが笑顔で並ぶチラシを見るとどうにも泣けてしまいますね。俗世界とはかけ離れた、尊い、平和そのものの笑顔だと思います。人生について、家族について、しあわせについて、深く考えさせられる映画でした。ていうか、すんごい泣いちゃったので、人がいない日でよかったなぁw

うさぎがいた

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帰り際、ロビーにうさぎのてっぴーがいました!放し飼いらしい。

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むかーし小学校で飼ってた気がするけど…とにかく数十年ぶりに近くで見ました。ふわっふわでけっこう小さい。丸っこい背中は我が家の猫と一緒だな〜。目がつぶら。そして移動がうさぎ跳びでめっちゃ可愛かったw

書いているのはこんな人。

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